2008年8月18日 (月)

読後感想:時砂の王

■読後感想

時砂の王:ハヤカワ文庫
著:小川一水

あらすじ:
気に入らない男の頭にコーヒーを注ぐ女に恋をした人造人間オーヴィルは、人類の滅亡を何度も経験しながら時間を遡り続け、どこと無くコーヒー女に似た感じの女性、邪馬台国の女王卑弥呼を守ってETと戦う。

感想:
いいねぇ、小川一水。
タイムパラドックスについてはやや無理がある記述が無いわけではないが、「無理」はほとんど気にならない。
それよりも、本作は元々短編として書いていた物が膨らみすぎて書き下ろし長編になったものだそうで、長編と言うには短すぎて物足らない。もっとくどい描写が多くなっても良いから、作品の世界に長く留まっていたかった。

-----------------
sent from W-ZERO3

| | コメント (0)

2008年7月10日 (木)

読後感想:遠すぎた星 --老人と宇宙2--

■読後感想
『遠すぎた星 --老人と宇宙2--』 ハヤカワ文庫

著:ジョン・スコルジー
訳:内田昌之

あらすじ:
サブタイトルの元ネタであろう映画「遠すぎた橋」は、観た事はあるはずなのだが内容をぜんぜん覚えていない。しかし、本書を読む上ではまったく関係ない。
だって、原題は直訳すると「幽霊旅団」、星もなければ遠すぎても居ない。

かって75歳のジョン・ペリーに「オレの嫁」扱いを受け、すっかりその気のジェーン(9歳)は、人類を裏切った反逆者にして天才科学者ブーティンの意識を受け継いだ生後間もないジェレドを預かることになる。
そのジェレド、会った事もない少女「ゾーイ」にすっかり心奪われ、暴走。大怪獣ガメラと一緒にゾーイの宝物であった「ぞうのババール」のぬいぐるみを持ち帰ったり、ゾーイの大好物の黒いジェリービーンズを食べて吐いたり……。
「どうせ預かるなら女の子が良いなぁ」と、ジェーンが思ったとか、思わなかったとか……。

感想:
寝かせてあった「老人と宇宙」が思いのほか面白かったので続編もすぐに読み始めました。
75歳の老人ジョン・ペリーが主人公だった前作とは打って変わって、今回は登場人物のほとんどが10歳未満。
前作ほどの衝撃はありませんが、前作であまり語られなかった設定なども明らかになり、十分な読み応えのあるお話になっています。

また、前作同様色々な作品から影響を受けていますので、元ネタ当ても面白いかもしれません。
ジェーンが、囚われの身の食人嗜好の精神学者カイエンに意見を求めていくうちにお互いに友情が生まれるあたり、「羊たちの沈黙」過ぎてどうかと思いましたがさすがに映画のような展開には持っていかなかったので一安心。

それと、ミリタリーSFと言うことでバンバン人が死にますが、「自殺」をある程度肯定的に捉えているあたりが海外物としては非常にユニークでした。
しかし、「遠すぎた星」という邦題が付いた理由が謎だ。

-----------------
sent from W-ZERO3

| | コメント (0)

2008年7月 4日 (金)

読後感想:老人と宇宙(そら)

■読後感想
『老人と宇宙(そら)』 ハヤカワ文庫
著:ジョン・スコルジー
訳:内田昌之

あらすじ:
ヘミングウェイの「老人と海」のパロディの様なタイトルだが、スペースカジキマグロも、スペースアオザメも出てこない。
そもそも、老人は漁師ではなく軍人、しかも新兵だ。
75歳の誕生日に宇宙軍に志願したペリーは、宇宙船内で1000人を越える同い年の老人達と乱交パーティをしたり、宇宙人の頭を吹き飛ばしたり、ハンバーガーに舌鼓をうったり、6歳の女の子を「お前は『俺の嫁』」と口説き落としたりするうちにあれよあれよと言う間に2等兵から大尉にまで大出世。

植木等の映画、無責任シリーズも真っ青だ。
「見ろよ青い宇宙(そら)、白い雲。そのうち何とかなぁるだろぉぉ〜♪」

感想:
元々、作者が自分のブログで公開していた作品をまとめた物との事なので、広義のブログ本だ。
つまりは、「鬼嫁日記」や「ネコ裁判」、「麻婆豆腐は飲み物です」と同ジャンル……いやいや、かなりしっかりしたミリタリーSFでした。
著者が後書きで述べるまでもなく、「宇宙の戦士」に多大な影響を受けており、「戦争」に関しての表現が泥臭く血生臭く力強く続きます。
この辺り、文化が違うとでも言いましょうか、日本人作家では掛けない所です。

75歳になると、「10年の兵役」と「今までの人生で築いてきたもの全てとの決別(法的に死亡したことになり、2度と地球には戻れない)」の引き換えに、超科学による特別処置によって若くて健康な状態になれるのですが、もし自分が75歳になったとき、このような選択肢があったとしたらどうするだろうと考えてしまいました。
私が引っかかったのは「今までの人生で築いてきたもの全てとの決別」です。
75歳とは言え、それなりに健康な老人が、(愛妻に先立たれているとはいえ)、子供や孫、その他の思い出全てを捨てて、どんな地獄が待っているか判らない様な世界に身を投じるものでしょうか?

と、ここまで書いて気がついた。
アメリカの平均寿命は男性 73歳。日本は78歳。
健康だが平均寿命をすでに超えている、健康で平均寿命を超えていない。
精神的にこの差は大きい……。日本人としては、75→80歳と読み換えると主人公が全てを捨てる事に迷いが無かった理由が理解できるような気がします。

-----------------
sent from W-ZERO3

| | コメント (0)

2008年6月25日 (水)

読後感想:反逆者の月

■読後感想
『反逆者の月』 ハヤカワ文庫
著:デイヴィッド・ウェーバー
訳:中村 仁美

あらすじ:
月探査船のパイロットでアメリカ空軍のパイロット「コリン」は「月」自体に拉致された。
ツンデレな月は、強引に拉致しておきながらコリンをご主人様扱い。
月の力を手に入れ、改造手術まで受けてパワーアップしたコリンは、5万年前に月から逃げだして人類を裏から操りつづける反逆者を殲滅するために単身地球に舞い戻った。
「月に代わってお仕置きよッ!」

感想:
軽い話が読みたくなって「スペオペ」を前面に押し出している本作を読んだ。
3部作の1巻目と言うことだったので、本来は全て読んでから感想を書くべきだとは思うが、あくまでも1巻の観想として書いておく。

あくまでも「スペオペ」と言うことで、細かい部分には目をつむり、お話を楽しむための作品。アメリカ万歳のハリウッド風味が多少強めでアクセントにジャパニメーションの影響を感じる部分もある。
決して面白くないと言う訳ではないのだが、中盤から後半に話が進めば進むほど主人公の影が薄くなり、副官的立場のキャラと色々被るところが多くなる。
作者に失礼かもしれないが、娯楽小説として未成熟だと感じてしまう。
本作は作者の長編処女作との事でそう感じてしまうのかもしれない。

2巻以降は月を駆って銀河帝国へ旅たつらしいので、更なる奇想天外な話に期待したい。

ところで翻訳者である「中村 仁美」氏の名前に見覚えが無いのでググって見たらフジTVの女子アナが引っかかってきたのだが……別人だよね?

-----------------
sent from W-ZERO3

| | コメント (0)

2008年6月17日 (火)

読後感想:ハイデゥナン

■読後感想
SF物は出版されても直ぐに絶版になってしまうので、少なくとも文庫は見かけたら買っておく事にしている(後で読む…つもり)ので時々持っているのにダブって買ってしまうことがある。もったいない出費だが、読んでいなかったのだから仕方がないと諦めがつく。
ところが最近、一度読んでいる本なのに間違って同じ本を買ってしまうことがあった。

これはちょっと、色々な意味で痛い。

そこで、個人的な記録のために記録を付ける事にした。
書評と言うほど大した物を読んでいるわけではないので「読後感想」


・藤崎慎吾『ハイデゥナン1〜4』
 ハヤカワ文庫

あらすじ:
伊豆の海でダイビング中の大学生 岳志は、海中で若い女の声が聞こえ、戸惑っていた。同時刻、与那国島のムヌチ(巫女のようなもの)見習いの柚は、夢のなかに何度も出てくる青年に、思わず声をかけてしまった。
柚は、“神”から「琉球の根を掘り起こせ」と無理強いされていたのだった。
一方、岳志が師事するマッドサイエンティストグループは、地殻変動により判明した、南西諸島沈没に備えて対策を立てていた。

感想:
残念。素材は良いが、調理法と味付けがあまり好みではなかった。
エウロパの神になる話や、マントル細菌など、面白くなりそうな要素が一杯あるのに、妙に「SF的」な対策室の小道具や、「超能力」もどきのオカルトが出てきて「日本沈没」な展開。
こんな言い方が適切かどうか解らないが、小松左京原作の大作SF日本映画を観ている時に感じる違和感に近いものがいつまでも残った。
少なくとも、私が読みたかったSFとはちょっと違っていた。

1巻の巻末の解説が「SFにありがちなうそ臭さがまったく無く、全てにおいて納得できる……」と大絶賛だったので、オカルト的な所をどう説明してくれるのか楽しみだったんだけど……まぁ、これは作者のせいではなく解説が悪いのだが。


-----------------
sent from W-ZERO3

| | コメント (1)